(これは「ガダルカナル島上陸戦 ~補給戦の実態~」の一部です)
4-1 日本の基地航空部隊の増援
日本海軍は、米軍の上陸を受けて、3-3節で述べた反撃を行った。しかし、日本の陸・海軍は7月からニューギニアでの作戦も本格化させていた。米軍が自軍の運命を決める飛行場整備に必死になっていた頃、ラバウルの第25航空戦隊(第5空襲部隊)は、8月13日の大本営陸海軍部中央協定に従って東部ニューギニア方面の作戦を支援していた。それによって、第25航空戦隊は、後述するように8月12日から21日頃まで、ニューギニアの爆撃と南海支隊のブナへの輸送船団の護衛に駆り出された [4]。
ニューギニアへの部隊輸送と並行して、13日にはニューギニアのブナ飛行場整備加速のための設営隊がバサブアに上陸し、18日には南海支隊が、そして21日には第41連隊の一部がバサブアへの上陸した。また海軍は独自に21日から呉と佐世保の特別陸戦隊を用いたラビの攻略を進めていた。しかし、ラビ攻略は失敗して9月5日に撤退した。
ラバウルからガダルカナル島までのソロモン諸島付近の図 (再)
SN作戦でのラバウル飛行場の拡張とカビエン飛行場の整備を受けて、3-1-1節で記した第26航空戦隊の司令部と戦闘機隊は8月21日にラバウルに、その陸攻隊はカビエンに進出した。これらは前述したように第6空襲部隊となった。そして、第5空襲部隊は東部ニューギニア方面を、第6空襲部隊はガダルカナル島を中心としたソロモン諸島方面の航空作戦を実施することになった。
2-1節で述べたように、日本軍の目はポートモレスビーに向いており、この時点でも日本軍の作戦の重点は、ガダルカナル島ではなくニューギニアだった。大本営陸軍部とラバウルの第17軍は、ガダルカナル島飛行場完成後の脅威をあまり理解していなかったと思われる。あるいは、ガダルカナル島飛行場奪還に対する甘い見通しもあったかもしれない。日本軍がガダルカナル島方面を主作戦として、本格的な奪回に乗り出すのは9月5日からである。
なお、海軍は4月28日にショートランドに水上機基地を設置しており、8月16日にはギゾ島にも中継のための水上機基地を設営した。これらから、水上機によってガダルカナル島へしばしば夜間爆撃が行われた。米軍施設への実質的な被害はなかったが、これは「チャーリー洗濯機」と呼ばれて兵士たちを精神的に悩ませた [8]「チャーリー」と呼ばれていたのはラバウルからの夜間爆撃で、水上機による爆撃は「ルーイ」と呼ばれていたという資料もある [22]。
4-2 ガダルカナル島への航空攻撃
ラバウルの第5空襲部隊(第25航戦)が、8月20日までにガダルカナル島に対して行った航空機による作戦は以下の通りである [29]。
- 8月11日:零戦6機がガダルカナル島を強行偵察した。
- 8月12日:陸攻3機で飛行場爆撃と偵察を行った。
- 8月14日:陸攻3機で偵察攻撃を行った。
- 8月15日:陸攻3機で攻撃するとともに、別の陸攻3機で食糧・弾薬などの物資の投下を行った。しかし味方部隊の位置がわからないため、この物資はルンガ岬の西ではなく東に投下され、ガダルカナル島守備隊には届かなかった。
- 8月18日:陸攻8機でガダルカナル島飛行場をようやく本格的に爆撃し、地上で炎上が発生したのを確認した。
米軍がガダルカナル島の飛行場を整備しつつあるこの重要な時期に、日本軍が飛行場整備妨害のための徹底した航空攻撃を行わなかったのは、米軍の飛行場整備を助けた。第25航空戦隊はニューギニア方面へも攻撃を行わなければならず、ガダルカナル島攻撃に専念できなかった。そのことは、第5空襲部隊(第25航戦)がニューギニアへの爆撃、あるいはその方面での船団護衛を8月11日、13日、17日、18日、19日、20日に行っていることでもわかる [29]。
また、この地方特有の頻発する悪天候にも攻撃が妨げられた。この後もガダルカナル島方面へ出撃しては、たびたび悪天候で引き返している。ただし、当時はまだ航空機による天候偵察を行っていなかった上に、ガダルカナル島守備隊からも、現地の天候に関する情報を受けていなかった。また、当時ラバウルの飛行場施設は劣悪で、滑走路は舗装されておらず、雨が降ると泥濘と化し、晴れると巻き上げる砂や灰で視界が利かなかった [4, p582]。これらも、航空機の稼働率を下げたかもしれない。
この間に米軍は飛行場の整備を着々と進めるとともに、揚陸できなかった物資を、エスピリッツ・サントからガダルカナル島へ必死に輸送し始めた。それによって、後述するように一木支隊第2梯団の到着の2日前の20日に飛行場が完成したことが、日米の明暗を分けた。飛行場が完成すると、日本軍の輸送船団は大きな被害を受けて、兵士と物資を輸送船では輸送できなくなり、飛行場の奪還は大きな障害を抱えることになる。
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